about

石フェスについて

石フェスは「石」をテーマにした公募展と 「石」そのもののコレクション展です。2015年にアトリエ三月の企画公募展としてはじまりました。

公募展は石にまつわる作品を様々なジャンルの作家たちが出品し、平面・立体・写真とバリエーション豊かな展示になりました。

石のコレクションではアトリエ三月にゆかりのある石の愛好家たちが集めた石を展示しました。珍しい石、何かに似ている石、不思議な石、存在感のある石。個性豊かな石が並びました。

来場者や作家たちが石を通じてコミュニケーションをとることができればという思いから、展示会場の一部に100~200の石ころを置き、自由に石積みをしたり並べたりすることのできるスペースも設けました。老若男女問わず、たくさんの方が石とのふれあいや石を通じての他者とのふれあいを楽しんでいかれました。

企画者自身、数年前から地方へ行った折に石を拾うことをはじめました。ひとつには愛読書のつげ義春作品の影響もありましたが、拾い続けるうちにそのおぼろげな行為がなんらかの力を持っているように感じ始めたのです。

無数にある石ころの中から拾い上げたひとつの石に思いを馳せる、石はどこからやってきたのか、自分はなぜその石を見出したのか。それは海辺でぼんやりと波間を眺めているときに心の中に去来するような、都会にいるとつい忘れがちになる時間の流れや感覚です。

子どもの頃、私たちの想像力はもっと無限大でした。いつかしそれは薄れていく。だけど、ほんの少しのことで思い出すことができるのです。たとえば、石を眺めることで。たとえ小さくても、存在感のある石というものは私たちにそうした感覚を呼び覚ましてくれるのです。

美術やアートと言われるとなにやら難解で、なじみのない方には無縁と思われることでしょう。でも、ただの「石」ならどうでしょう?誰しも一度は手に取ったことがあるはずです。石の表面をぼんやりと見つめたり、川面へ投げて遊んだりしたことがあるでしょう。

初年度に石フェスの噂を聞きつけてやって来た少女がいました。なんと彼女は小瓶一杯につまった色とりどりのキレイな石を持ってきてくれたのです。小瓶を差し出し「家族で旅行に行ったときに集めるんだ」と誇らしげに見せてくれました。必ずしも役に立つものではないかもしれません。でも彼女にとってそれは自慢の石たちで、いろんな思いが詰まった宝なのです。

小さな何かに思いを馳せ、思いを込めること。それは美術に携わる者は勿論、ふだんの生活をすこし違った角度から捉え、彩り鮮やかに感じるために不可欠なことなのではないでしょうか。

ただの石ころ一つに思いを馳せる想像力をもつことがひいてはこの世界をより豊かにする一助になる。そんな願いから今年も石フェスを開催します。